クラブこけしの裏道で、あるこけしが子猫を撫でている。
ゴミ出しに出てきた下駄番に目を止め話しかける。
「アンタ、ここの人かい?この募集の張り紙だけどさ、あたいでも良いのかい?」
下駄番(黒)「じゃあ、中へどうぞ。今チーママしかいないけど。」
お店の中に通された彼女は、椅子に座っていたチーママと目が合った。
チーママ「あなた・・・たこ少女じゃない。いつこっちに出てきたの。」
多少驚いた後のチーママの目は冷たい。
かつて鎌倉でお店を持っていたチーママは、少なからず彼女の噂を耳にしていた。
ハマの店では、マリのお客を取ったとか、挨拶なしにおさらばしたとか、良い噂ではなかった。
たこ少女とチーママ
たこ少女「あなたは確か鎌倉の・・・。じゃあ色々お見通しな訳ね。
あたい、東京でやり直そうと思ったんだけど、でもあなたの店では無理そうね。」
店を去ろうとするたこ少女。しかしそこに奥から声がかかる。
「ちょっと待ちなさい、もふっ。」もっふんママが奥から出てきた。
「あなた、うちで働きなさい。」
「だってママ、この娘は・・・」チーママをみて首を振るもっふんママ。
「やり直そうって言うなら良いじゃない。こういう娘もうちには必要もふ。
あの娘達の良い勉強にもなるわ、もふぅ。」
そう言い、ゆさこやボクッ娘を見るもっふんママ。ふくれるゆさことボクッ娘。
チーママ「ママがそう言うなら私は何も言わないわ。」
たこ少女「ありがとう・・・。あたい、心を入れ替えてやるよ。みんなよろしくね。」
そうしてお店に加わることとなったたこ少女。
しかし、今も時折、客がどこかを触ったと言っては店を飛び出してしまうことがある。
少しすると戻ってくるのではあるが、その度に下駄番(黒)は言っている。
「ウブなネンネじゃあるまいし、どうにかしてるぜあの娘」
つづく
たこ少女
○渾名:たこ少女(土湯系)
○工人:本田信夫
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福島は中ノ沢に発祥のたこ坊主こけし。
その多くは男かと思える形相ですが、本田信夫工人の作は、
どう見ても娘に私には思われ、ゆえに“たこ少女”と呼んでいます。
とてもキュートなのですが、逆に猫かぶっている様にも思え、
胞吉型の気品と比較すると、蓮っ葉感があったため、
各所に“港のヨーコ”をちりばめた今回の話となりました。
“アンタ、あの娘にほれてるね”というわけで、このこけしも大好きです。