クラブこけしは基本いつでもスタッフ募集の張り紙を出している。
“フロアレディ募集 週1日からOK!未経験者大歓迎!ノルマありません!時給2,000~”
その貼り紙を見てお店に入ってくるこけしがいた。
「すいません・・・張り紙を見て、こちらでよろしいのかしら?」
「はいはーい、もふっ」
出てきたもっふんママがその娘を見て驚愕する。
「あなたは・・・“流れのキイチ”!?ちょ、ちょっとそこで待っててちょうだもふっ」
ママがもふもふと息荒くオーナーのもとに来た。
「オーナー!キイチが、流れのキイチが来たのよ!」
「なんですと!!」
キイチが来るとはすなわち、店に青い鳥が来たようなものである。
伝説の流れホステスであるキイチの来た店は、
その類希なる雅さと、彼女の生まれ持つ能力により繁盛がもたらされるという。
いつしかキイチは“流れのキイチ”と呼ばれ、こけしクラブ界では重宝がられるのであった。
面談をするキイチ、オーナーともっふんママ。
「ではキイチさん。うちで働いていただけますか。」
「はい、喜んで。このお店には可能性を感じます。さらなる飛躍をお手伝いします。」
キイチのクマドリの中の目が妖艶にニッコリとし、キラリと光った。
「さすがはキイチね。すごい自信だわ。やったわねオーナー。私もうれしいわ。もふ」
キイチは(やってしまった)と思っていた。
(伝説と言われて調子に乗ってしまったわ。本当は“未経験者歓迎”と“ノルマなし”に惹かれたのに・・・)
実はキイチは他の伝説の姉さん方と違い、これが初仕事のため、ちょっと日和っていたのだ
皆が皆、初めから伝説ではない。しかし、キイチのスペックの高さは血筋である。
(言ってしまったからには頑張りますわ。)と気を引き締めるキイチだった。
つづく
キイチ
○渾名:キイチ(弥治郎系)
○工人:新山吉紀
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百戦錬磨(何に?)感のある妖艶な表情から、当時私の憧れであったのが、
この佐藤喜一型のこけしでした。いいなぁと思いながらもすぐ手にも入らず、
私のなかでムクムクと伝説のこけしと化していました。
ある日思い立って、初めて工人さんに手紙を書き、電話をして製作をお願いしました。
なんだかごときが工人さんに恐れ多い感じで、大変緊張しました。
結果、すばらしいこけしが届き、小躍りして喜びました。
そんなわけで、思い入れの強いこけしです。