都内の地味目な名所探訪(前回こちら)をライフワークとしているこけし娘のゆき子。
今回の探訪先は『目黒区総合庁舎』。かの巨匠村野藤吾設計の現代建築の名作である。
ゆき子は今回、庁舎近所のお洒落カフェ等、おまけ部分の調査にも余念がなかった。
というのも、この探訪趣味にはいつもクラブこけしから同行者を募っているのだが、
これまでの参加者達は暇つぶしや興味本位で適当にやってくるため、多少遊びが無いと、
直ぐに飽きたり、疲れたと言い出したり、ある種失礼な者ばかりであった。
しかも今回建築というお硬いテーマなこともあり、ゆき子はより気を使ったのだった。
果たして今回参加したいと手を上げたのはベレー。(店外186ほか)
ベレー帽にもんぺという奇抜な出で立ちの、独特な(ハイ?)センスのこけし娘である。
ゆき子はベレーとは初対面だが、この趣味を通して新しい友人を作ることも、
彼女がこの探訪に同行者を募る一つの理由であり楽しみなのである。
「ゆき子さん、興味深い企画に感謝します。しっかり建築探訪しますわね。」
「ゆき子さん、興味深い企画に感謝します。しっかり建築探訪しますわね。」
「始めましてベレーちゃん。参加ありがとね。後でお茶もできるからね。気楽にね。」
最初は張り切っても後で皆疲れて来ちゃうのよネと、内心思うゆき子をよそに、
目黒区総合庁舎を眺めながらベレーは熱く語りだした。
「建物に角があることを嫌った村野先生の特徴がふんだんに盛り込まれているわ。」
「先生呼び!?すごい入れ込みようね。気楽でいいのよ。後でケーキもあるわよ。」
「アルミ鋳型の外装とバルコニー作る奥行きにより、建物が光を吸い込んでいるみたい!
日光が建物から周囲へ反射することすら、“角”と捉えた先生のお答えがこれなのね!」
「べ、ベレーちゃん、あまり飛ばすと疲れちゃうわよ。むしろもうお茶にしよっか?」
これまで参加の娘達を疲れさせてしまった経験から、ゆき子は気が気ではない。
「ウフフ。ゆき子さんは花よりお団子ですね。建築探訪はお茶の口実かしら?」
悪気なく言い放ったベレーにゆき子は何ともいたたまれない気持ちに包まれた。
「(何この悔しさ!?いつもあなた達があんなだから今回気を使ったのに!)」
気持ちを180度切り替えた彼女は、ベレーとハイレベルな建築談義を戦わせたという。
そしてその後は互いの知見の深さを讃え合い、素敵なティータイムを過ごしたという。
つづく
=====================かつては戸棚やブラウン管テレビの上に昭和感をみなぎらせていたこけしも、
昨今はお洒落インテリアとなった今日この頃。そんな流れを後押しすべく、
現代建築の名作とともにこけしの新たな魅力を演出しようとしましたが、
現代建築の名作とともにこけしの新たな魅力を演出しようとしましたが、
そこまで上手い写真にもなっていない気がし、自らのセンスの無が残念です。